ラウィーニア


評価:
アーシュラ・K・ル=グウィン
河出書房新社
(2009-11-13)

現時点での「所有せざる人々」「ゲド戦記」のル・グウィンの最新作。

内容(「BOOK」データベースより)イタリアのラティウムの王女ラウィーニアは、礼拝のために訪れた一族の聖地アルブネアの森で、はるか後代の詩人ウェルギリウスの生き霊に出会う。そして、トロイア戦争の英雄アエネーアスの妻となる運命を告げられる―古代イタリアの王女がたどる数奇な運命―叙事詩『アエネーイス』に想を得た壮大な愛の物語。SF/ファンタジー界に君臨するル=グウィンの最高傑作、ついに登場!2009年度ローカス賞(ファンタジー長篇部門)受賞作。

正直、原典を読んだことはないし、この先もないかもしれない。
しかし、原典を知らずとも一気に最後まで読んでしまうだけの魅力に溢れている。

独りの王女が、その幼き時代より死までを独り語りで語っていく。しかも詩人の物語の中に居る人物としての自覚まである。
トロイア戦争と言えば、トロイの木馬伝説であり、かのシュリーマンの奇跡的な発掘譚は何かと古代文明に惹かれていた少年の僕には胸をわくわくさせるものだった。
そして「アエネーイス」もまたトロイア伝説の一部であり、実際の叙事詩の中にはほんの数行しか登場しないラウィーニアというイタリアの小国の王女が主人公である。

まず、文章が美しい。
ある意味淡々と語られるのだが、かえって静寂とともにあっただろう古代の風景がより鮮やかに甦る。戦とはいえ、お互いの命のやり取りであった時代であり、精霊と神々と人間が共存していた景色である。

そして、ラウィーニアの強さが美しい。
宮崎駿もまたギリシャ神話の王女ナウシカを自作に取り入れている。
グウィンのラウィーニアと宮崎のナウシカには共通点も多い。
両者とも伝説の中で語られる人物であり、しかもどちらかと言えばちょい役だ。
グウィンにしろ宮崎にしろ、全くなんという想像力だろう!

「秋の極上のワインのごとし」まさしく。


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