男の強さと女の優しさ(ブルースと映画の関係)

評価:
サム・シェパード
TCエンタテインメント
(2006-08-25)

先日、ヴィム・ベンダース監督最新作「Don’t come knocking」を鑑賞してきました。

あの不朽の名作、「パリ、テキサス」のサム・シェパード脚本です。

パリ、テキサス デジタルニューマスター版

パリ、テキサス デジタルニューマスター版


「パリ、テキサス」では、失語症を患い、いわゆる社会不適格者となったトラヴィスが、自分の弱さを受け入れつつ、父親として、夫としての責任を果たそうとする姿が、淡々と描かれていました。

離れ離れとなった息子と母親を結びつけ、再び独りで旅立って行く姿は「弱い男」のダンディズムに溢れ、観るものを感動させました。“ロードムービーの傑作”の称号にふさわしい作品です。

さて、今回の「Don’t come knocking(邦題:アメリカ、家族のいる風景)」は、主人公はやはり、ダメ男です。しかし、今回はホントにだめ男なんです(笑)

放蕩三昧を繰り返してきたかつての銀幕のスター、ハワード(サム・シェパード)が、老境に入りかけの自分を振り返って人生を悔いる、というあらすじです。

で、この作品の主題はずばり「女の優しさ(強さ?)」でしょう。

ハワードの母親(エヴァ・マリー・セイント)。ハワードが若い頃ロケ先で孕ましてしまったカフェの女中、ドリーン(ジェシカ・ラング)。ドリーンとは別の女性との娘スカイ(サラ・ポーリー)。そして、劇中では登場しない、スカイの母親(死亡しており、火葬場からスカイに骨壺として抱かれて出てくる。その後、最後までスカイとともに旅する)。

この女性たちの、懐の深さ。

こういう話って、表現が難しいとは思うのですが、女優陣が素晴らしい。ジェシカ・ラングはさすが。田中裕子さんと張ってます(笑)

ハワードとともに、ドリーンとの息子アール(ガブリエル・マン)も、突然現れた父親に対して我を忘れてしまうドタバタぶりで、情けない男の姿を象徴しています。

加えて、映像がすばらしい。まるでロジャー・ディーンのアルバムジャケットのごとし。

撮影は前作「ランド・オブ・プレンティ」に続いて、フランツ・ラスティグFranz Lustig。

(ちなみに「ランド・オブ・プレンティ」、いまひとつ。レナード・コーエンの音楽はよかったけれど。)

なかなかの佳作でした。しかし、この邦題、どうにかならなかったのでしょうか(^^ゞ

ヴィム・ベンダースと言えば、音楽とは切っても切れない監督です。

「パリ、テキサス」のライ・クーダーを初め、「BUENA VISTA SOCIAL CLUB」のキュ-バ音楽、「リスボン物語」のマドレデウスと、かなりのこだわり派です。

今回、音楽監督を任せられたのはT・ボーン・バーネット。

実は偶然にも、先日コーエン兄弟監督作「オー・ブラザー!」を観ました。

オー・ブラザー!

オー・ブラザー!

これはお薦め!理屈抜きで、楽しめます。

童顔のTボーン・バーネットも「ギターのために悪魔に魂を売った男」として出演しています。

渋~いギターもあり(^_-)

ブルースと映画と言えば、「ミリオンダラー・ベイビー」もよかったなあ。

「男の強さと女の優しさ(ブルースと映画の関係)」への6件のフィードバック

  1. ベンダース、イイっすよね~。
    “ベンダースはロックだ!”と叫ぶ映画フアンも多いです。
    俺は“まわり道”が妙に好きで
    何度も何度も見てます。

  2. >盆造(´ー`)y━・~~~さん
    おお!ここにもヴェンダースフリークが!(笑)
    ロックですよ、ロック!いぇい。
    「まわり道」まだ観てないので、今度観てみます(^_-)

  3. >加えて、映像がすばらしい。まるでロジャー・ディーンのアルバムジャケットのごとし。
    笑っちゃいけないんでしょうが(笑
    >ブルースと映画と言えば、「ミリオンダラー・ベイビー」もよかったなあ。
    この映画、よかったですよね。
    DVDでもう一度みようかと思っています。

  4. >ickwさん
    >笑っちゃいけないんでしょうが(笑
    え?え?
    笑うとこじゃないですぅ・・・

  5. 「パリテキサス」「ミリオンダラー。ベイピー」も良かったですね。
    関係ないかもですが、プロフィールに、藤原新也しの名前が出ていたので、新刊「渋谷」が出てますね。今日買いましたよ。読むのが楽しみです。
    イタリア戦は見たけど、今日のフランス戦は見れないですね。寝不足です。

  6. >Yuriさん
    藤原さん、大ファンです!平田さんとも、いつも盛り上がりますよ(^_-)
    フランス、勝ちましたね。
    僕の予想では、イタリアの優勝です。

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