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ココロの止まり木

評価:
河合 隼雄
朝日新聞社
¥ 546
(2007-12-07)
コメント:心理学者河合隼雄さんの週刊誌の連載エッセイ集。平易な言葉で書かれているが、とても深い洞察に満ちあふれている。

河合隼雄さんの著作は、特に難しい言葉が並べられている訳ではない。
しかし、その中身は深い海を覗くにも似て様々な示唆に富んでいる。

一見平易な言葉が並ぶエッセイだが、実は多くの示唆に富んでいる。
これは臨床家としての実績から、様々な条件の人たちと接してきた結果であろう。
また、日本人らしからぬ視点も合わせ持つ。
例えば、「コジンシュギ」と題された文章ではオーストラリアの社会学者ポーリン・ケントさんを引用しながら、家庭の中での「子供部屋」の使い方の違いで欧米と日本の個人主義の違いを述べている。
なるほど。
日本人が集団にならないと不安なくせに、いざ相談事をしようとすると各々勝手ばかりを言ってまとまらないことがよくわかる。
「恋愛の今昔」では、よしもとばなな「ハゴロモ」と「ロミオとジュリエット」を比較し、たまたま手に取った「ハゴロモ」が「アタリ!」だったと著者は喜ぶ。
「流れに棹さす」「水清ければ」では、心理臨床家の本領発揮と言った珠玉の内容である。慣用句の連想から、人の個性から人生論までを語る。
このように幅広い視点から物事を捉え、的確に理解している人は、世の中に実はそんなに多くはない。
このような方が、長年心理療法を通して沢山の方々と関わってこられたことは日本人として幸運だったろうし、このように著作に触れられることも感謝したい。
願わくば、多くの後継者が現れていただきたいと思う。