今日、宮崎市内の青木画廊に、書の額装をお願いに出かけました。
見積もりをしていただいている間、たまたま2階のギャラリーで行われていた「ミロクノマリョク其の弐 弥勒祐徳・小川孝浩 二人展」を鑑賞しました。
弥勒祐徳(みろく すけのり)さんは、宮崎の美術界では有名な方です。今年87歳になられるのですが、ネットで検索してもあまり資料がありません。
西都市に在住で、神楽の絵をライフワークとされています。
階段を上ると、大きな桜の木が目の前に現れます。
左下の角に書かれたサインと日付を見ると、つい先日3月31日に描かれたものだと分かります。できたてのほやほやです。
西都原の穏やかな日和のもと、楽しげに集まる人々を、やさしく大きな枝で包み込むような一本の桜が画面一杯に描かれています。
もちろん、西都原は桜の名所ですので、その木だけではないのですが、その木には何か弥勒さんの心をつかむものがあったのでしょう。
そして、6年に及んで介護を続けられている、奥様のスケッチが展示されていました。
次第に言葉を失っていく妻。それでも表情で何が言いたいのかは伝わる。ならば、顔のスケッチを毎日描こうと、ずっと続けられているそうです。
その数は、ファイルに20冊ほどにもなっていました。
同じ人物を毎日描いても、一枚と同じ絵はない。当たり前のようですが、僕はそのことに深く感動しました。
人というものは、日々変化しているのですね。
そして、弥勒さんの持つ奥様への愛情、それだけでなく、誰となく分け隔ての無い優しさが、ミロクノマリョク、だという気がしてなりませんでした。
おそらくお若い頃のお話でしょうが、東京での初個展では、一枚の絵も売れなかったそうです。
しかし、宮崎の田舎で埋もれるには、本当に惜しい方だと思います。
-抽象でも具象でもなく心に写った対象を形として描いている。/ Sukenori Miroku