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ノーバディズ・フール

いやあ、いい映画だ。

物語は、アメリカのとある田舎町。
町が小さ過ぎて、顔見知りばかり。悪い噂も、いい噂もすぐに広まってしまう。
夜になると、酒場にたむろしポーカーにいそしむ“バカな”大人たち。

この映画には、取り立てて事件があるわけでもなく、セックスがあるわけでもなく、流血事件(あ、警官が鼻血出すなそういえば)があるわけでもない。
ただの田舎町の日常を描いた作品。

それだけに、サリー(ポール・ニューマン)の、酸いも甘いも知りつくした大人の渋さがかっこいい。
それを取り巻くどうしようもない大人たちもまた、魅力的だ。

例えば、雪かき機の一件は、サリーが雇い主である建設会社の社長(互いに裁判係争中)に借りようとするが、断られる。
社長(ブルース・ウィルス)も売り言葉に買い言葉、つい意地を張ってしまうのだが、サリーはなんと、社長の奥さん(後にサリーと駆け落ちを計る)に「貰っていくよ」と一声で持って帰ってしまう。
それから、マジの泥棒ごっこが始まるのだが(笑)、大人げないように見えて実はそうではない。
毎日、狭い町のどこかで顔を合わすのだ。本気で怒っていれば、怒鳴りあいの喧嘩になるだろう。
しかし、互いに顔を合わせている時には素知らぬ振りをし、夜中に盗みだす。
喧嘩になれば、町でお互い暮らせなくなることは百も承知なのだ。
つまり、互いが大人じゃなければ、この“泥棒ごっこ”は成り立たないのだ。

Nobody's Fool [抜け目のない、賢い]

クリント・イーストウッドの「グラン・トリノ」と同系統の作品だが、時代がちょっとノスタルジックなのと、「グラン・トリノ」は基本的にイーストウッドの独り舞台だけど、こちらは脇役(ジェシカ・タンディ、ブルース・ウィルス、メラニー・グリフィス等々)が素晴らしい。

何年か経ったら、また見たくなるに違いない1本。