アーシュラ・K・ル=グウィン, 清水 真砂子, Ursula K. Le Guin
久しぶりに、良質のファンタジーと巡り会った。
ル=グウィンの作品は、高校生の頃にSF作品を何点か読んだことがあった。その時の印象は、根底にフェミニズム的なメッセージ性を感じ、異性にとっては(笑)何か落ち着かないもの、というのが正直なところだった。
「ゲド戦記」も名前こそ知ってはいたが、はじめの印象のせいでなかなか巡り会えないでいた。
全6冊のうち、現在「外伝」以外を読んだのだけど、世界観といい、人物の心理描写といい、素晴らしい。
舞台は、ファンタジーにつきものの「魔法」が支配する世界の話だが、ファンタジーだからなのだろうか、児童書として紹介されることが多く、実際図書館でも児童書コーナーに置いてある。このため、大人に読まれる機会が意外と少ないんじゃないかな?そのために損をしている人も少なくないんじゃない?と思ってしまう。
それほど、この本は深い。
「魔法」を「現代科学」と対比して読むのもいい。また作者は、「呪文=言葉」に込められた力もあらわにしていく。この世とは、言葉に因って成り立ち、言葉が支配する。よって、安易に汚れた、危険な言葉を吐いてはならない。同時に、言葉を超えた世界も存在する。
生とは何か?死とは何か?幸せとは?
それらを教えてくれるとはいわないまでも、この本を通して、少なくとも考えるきっかけを与えてくれることは間違いない。
ポッター君よりゲドが好き。